卵巣嚢腫
卵巣嚢腫とは?
卵巣嚢腫とは、卵巣内に液体や脂肪がたまってしまう、触るとやわらかい腫瘍のことです。肥大するとこぶし大やそれ以上になることも少なくありません。なぜ、こうしたのう腫が形成されるのか、原因はまだよくわかっていません。
嚢腫の中身によって、以下のように分類されます。ほとんどは良性ですが、ごく稀に悪性(卵巣癌)のこともありますので注意が必要です。
漿液性嚢腫
卵巣嚢腫で最も多いタイプです。
漿液という、卵巣から分泌される透明の液体がたまったものです。
粘液性嚢腫
ゼラチン状の粘液がたまったものです。
かなり大きくなることがあります。
皮様性嚢腫
人体の元となる、胚細胞にできるもので、歯や毛髪などの組織が含まれた脂肪の塊からできています。
卵巣嚢腫の症状
初期の段階では、自覚症状はほとんどありません。
進行して嚢腫が大きくなってくると、下腹部膨満感、腰痛、下腹部痛、便秘などの症状が出てきます。
注意が必要なのは、嚢腫が大きくなると、卵巣の根元が回転してねじれてしまう「茎捻転(けいねんてん)」を起こしてしまうことです。茎捻転を起こしてしまうと卵巣への血流が滞ってしまい、一部の卵巣の細胞が死滅してしまう可能性があるため緊急手術も必要となります。
卵巣嚢腫と妊娠について
●卵巣嚢腫があっても妊娠は可能ですが、妊娠中に手術となるケースもあるので、妊娠前に主治医と今後の妊娠について確認をしておきましょう。
●卵巣嚢腫の手術後の方はAMH(卵巣年齢)検査をすると値が低めに出る傾向があります。
●小さな嚢腫が集まって見えて、生理不順があり、ホルモン検査でLH(黄体化ホルモン)値の高値が見られるものを多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)といいます。
卵巣嚢腫と不妊について
卵巣チョコレート嚢胞(卵巣の中に子宮内膜症ができて古い血液がたまっていく状態)による排卵障害や、卵管の癒着などが不妊の原因になることがあります。
漿液性嚢胞や皮様嚢腫、粘液性嚢胞は必ずしも不妊につながるとは限りません。ただし、嚢腫があるまま妊娠すると、妊娠中に病変が破けたり、茎捻転が生じるなど、重症化する場合もあります。このようなリスクを避けるために、妊娠前にある程度大きな卵巣嚢腫は手術で摘出することを検討します。
卵巣嚢腫を早期発見するためには?
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経膣エコー検査で卵巣をくわしく観察することが大切です。
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経腟エコー検査では、子宮の大きさや、内膜の厚さ、卵巣の大きさや中の様子などをみることができるため、さまざまな子宮・卵巣の疾患を調べることができます。
経膣エコー検査を含むレディースドックもおすすめです。
卵巣嚢腫の治療
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嚢腫種類、大きさ、妊娠の希望などを考慮して治療法を検討します。
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小さな卵巣嚢腫は経過観察します。
6cmを超える卵巣嚢腫は茎捻転や破裂のリスクが高まるため、手術を考えることが多いです。