子宮の教科書 第二十九話
精子は「できたてほやほやを調達」、卵子は「つくり置きシステム」
男性の精子は、オーダーが入ったら、
「あいよ!」とその場で調理するようなシステムでつくられます。
「はい、できあがり!」というふうに、いつもできたてほやほや、新鮮です。
ですから、60歳でも70歳でも80歳でも、男性は子どもをつくることができます。
そしてある日を境に「いや、いきなりいわれてもつくれないよ」と注文に応じることができなくなります。
そうなってはじめて、もう子どもをつくる能力はないということになります。
一方、女性は逆です。お店が開店する前に、閉店する20年以上先の分まで、
卵をまとめ買いをしていると考えてください。
一生分の卵を、すでに買ってしまっているのです。
ちなみに、この一生分というのは、あり余るくらいの量です。
たとえば、途中で卵巣が腫れてしまうなどの卵巣の病気で、
左右2つのうちの1つを取っても、
残ったもう片方の卵巣だけで一生分の卵は間に合うくらいの量です。
ギリギリ調達ではありませんから、安心してください。
そして当然ですが、大量に抱えている一生分の卵は、時間がたつにつれて古くなっていきます。
冷蔵貯蔵庫の中に、大量の卵を閉経分まで持っているとイメージしてください。
そこからポンポン使うとき、若いうちはどれも常にフレッシュな状態ですが、
35~40歳ぐらいになってくれば、全部だめになっているとはいわないまでも、
割ってみたら「あ、この卵はだめだな」ということもあります。
別の卵を開けてみて「あ、こっちは大丈夫だ」ということももちろんあります。
いきなりすべての卵が悪くなるわけではなく、年齢が進むにつれて、だんだん、だんだんだめなたまごが増えてくるのです。
著者:宗田 聡医師(広尾レディース院長)
引用:31歳からの子宮の教科書(出版:ディスカヴァー・トゥエンティワン)